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Rストールマン辞任に見る、発言の炎上

 

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Rストールマン辞任に見る、発言の炎上

2020年2月25日更新
OSSの貢献者について気になる記事があったので思うところを書いてみる。

Rストールマンとは

リチャード・ストールマン
この名前を知らない人は多いかもしれないが、プログラム開発をするエンジニアなら
gccを知らない人はいないだろう。

gccとは、とある有能なエンジニアが作ってくれたCコンパイラから始まる、C++などの開発環境。
コンピュータの世界ではいいものが質の劣るものを駆逐していく。
もちろんその過程で支払う金額を考慮しなければならないが、
もしも質の良いものが無償だったらどうだろう。

Rストールマンはgccを開発し、よき品質のソフトウェアを無償で提供してきた。
今日ソフトウェア環境が整っているとしたら、彼の貢献がかなり含まれているといえる。

Richard Stallman

Richard Stallman

gcc登場のころの開発環境

Rストールマンは1985年にフリーソフトウェア財団を立ち上げ、フリーソフト、
オープンソースソフトの推進を始めた。
彼がなぜそういう思想に至ったのかは自分には想像しがたいが、
おそらく1960年代後半に始まるヒッピーブームが影響しているのではないだろうか。
反主流、反体制的な社会で育ったRストールマンが高額なソフトウェアに対し不満を持ち、
おりしもソースコードの非開示の流れから、ソースコードの開示と自由な利用の思想
持ったのではないかと思う。

当時もそうだがPCのプログラムは性能の最適化のために、
スクリプトを実行するインタプリタ方式よりは、
CPUネイティブなコードに変換されたコンパイラ方式で提供される。
このコンパイラはたいていの場合はハードウェア供給元が非常に高価なパッケージとして販売していた。
自分が80年代後半に購入したシャープ製X68000のCコンパイラは当時5万~8万したのではないだろうか。
もう記録も記憶もないのでわからないが、非常に高価なのに性能はいまいちだったという記憶がある。

これを有志(ボランティア)が移植した、gccを使うととても性能が向上した。
gccってなに?当時はネットがないので情報が少なく、
雑誌の付録についていたそのコンパイラを使うと、高い性能をたたき出したことに驚いた。
なんで優秀なソフトウェアが無償配布されているの?それはなぜか。GPLだ。

GPLとは

Rストールマンの名前を知らないエンジニアでもGPLは知っているだろう。
場合によっては「感染する」などと表現する人もいるのだが、GPL、
すなわちGNU Public Licenseはライセンスを適用するソフトウェアを使う場合、
修正して作り変える場合について1989年に定義されたものである。
要約すると、

  • GPLで作られたソフトウェアはだれでも利用できる。
  • プログラムを再配布できる。
  • ソースコードを改変して利用することもできる。
  • 改変を実施したものは、改変したソースコードを提供する権利を持つ。

重要なのは、

GPLで提供されたソフトウェアはその改変したソフトウェアもGPLで提供しなければならない。

これはコピーライトに対してコピーレフトと呼ばれている。

この仕組みのおかげで、一部の企業がソースコードを独占することができない。
世間一般に提供されたソースコードを見たエンジニアが改良し、
よりよいソフトウェアが作られていく仕組みになっている。
このコピーレフトにより作られた有名なソフトウェアは、
gccだけでなくLinuxカーネルも代表である。

本題

そんなRストールマンが最近様々な役職をやめているという記事を見た。

記事によるとエプスタイン事件というRストールマンとは全く関係がない事件
(注:ここでは事件の詳細については触れない)にコメントした際に、炎上したということのようだ。
Rストールマンは知人の疑惑に対して「疑惑の言葉があいまいである」と指摘しただけだ。

その指摘を見たあるエンジニアがRストールマンを役職からやめさせようと運動をおこし、
メディアに取り上げられた結果、大事になったということのようだ。

単にRストールマンは頑固で周囲への想像力が足りない典型的なエンジニアという人なのだろう。
こういう書き方をしたら気分を害する人がどれだけいるか、
という想像力があればこんな事態にはならなかったのだろう。

でも有能なプログラマは、たいていに頑固な人だ。
妥協しないからいいものができる。いわば職人だ。
失言のようなその発言を都合よくねじ曲げ、Rストールマンを辞任に追い込むような罠を張られ、
引っかかったようだ。

炎上はなぜ起きるのか

日本だけでなく、USでもこういう手の炎上があるようだ。
インタネットにより大衆は世界に向かって発信できる機会を手に入れたと思っていたが、
逆に自分の言いたいことを自由に言えなくなった。
世界は広くなったが、言論の自主規制が蔓延する暗闇に閉ざされてしまったのかもしれない。
そこには妬み、恨みなど人間のいろいろな感情が渦巻いて、
目立つ人の足を引っ張ろうという負の力があるように思える。

オープンソースを立ち上げた結果、今の社会ができ上がったといっても過言ではない。
オープンソースがなければ、今の社会になるにはもう少し時間がかかっていただろう。
世の中のWEBサーバはいったいどれだけの数が無償のapacheなどで動いているか。
障害監視を行うZabbixを使って、どれだけ多くのの運用者が安心して夜ぐっすり眠ることができるか。
Rストールマンの始めたフリーソフトウェアという概念によって、
どれだけソフトウェア技術の進歩が加速しただろうか。

Rストールマンは9/17にMITの役職を辞任した。
この社会ができた貢献者であるRストールマン氏の名誉が回復される日が来ることを願う。

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著者プロフィール
irvine
 ソフトウェア設計、ストレージ設計を経てクラウドにかかわる仕事をしている、東京郊外在住のエンジニア。
 仕事でUS,UK,SGなどの国とかかわる。
 自作PC、スマホ、タブレット、AV機器好き。ドラクエウォークはルーチンワーク。Linuxやストレージ、IT業界の動向は興味を持っている。
 新しい機器、サービスに興味あり。年数回のレビュー(自腹購入、ご依頼)と発表されて興味があるものの新製品机上レビューをやっている。
 2022年はJAPANNEXT様のアンバサダーを務めました。
 
 

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