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HDD御三家の東芝からエンタープライズ向けの大容量HDDが発表された。
大容量ストレージデバイスであるHDDについてのまとめはこちら。
東芝のHDD事業会社である東芝デバイス&ストレージ株式会社より発表があった。
MG09シリーズで18TBのニアラインHDDのサンプル出荷を3月末から開始する。
出典:東芝デバイス&ストレージ WEBサイト
東芝は他の2社に比べると技術面で若干遅れているが、やっと18TBのHDDを販売できる状況になった。
しかも今回は悪名高いDM-SMRではなくCMR方式であり、なおかつ記録方式は初耳のFC-MAMRを採用という。
サンプル出荷なので価格は不明。
3TBの容量からしばらく技術面のブレークスルーがなくて容量拡張ができず足踏みが続いていたが、
この2年ちょっとは新しい技術によって20TBまで拡張している。
3TBは垂直磁気記録方式で実現していた。簡単に言うと従来は磁性体の表面にNとS極を作って
データの記録をさせていたが、垂直磁気記録により表面ではなく深さ方向でNとS極を記録できるようになった。
このため、1ビットのデータ記録に必要な面積が格段に少なくなり、3TBが実現したようだ。
しかしこれに続く技術がなかなか実用的にならず昨今まで3TBが続いていた。
それを打ち破ったのがHAMR、熱アシスト磁気記録方式だ。
これは何かと簡単に言うと、書き込み時に熱を与えることで、より狭いエリアにN、S極を設定できる
ようにする技術だ。熱でねぇ、って思うが。
そして近年、この方式でも限界が見えてきて次の技術がでてきているようだ。
東芝が推しているのは、FC-MAMR、Flux Control- Microwave Assisted Magnetic Recording、すなわち
磁束制御型マイクロ波アシスト磁気記録方式だ。
ん?何のことかわからない。上記WEBをもう少し読み解く。
「MG09シリーズ」は、MAMR(マイクロ波アシスト磁気記録)の書き込み磁極からの磁束制御によるアシスト効果などを用いて、記録密度を高めています。
これらの技術により、記憶容量は、当社前世代品の16TBに比べ12.5%増となる18TBの大容量化を実現し、容量あたりの消費電力(W/TB)を約10%※(SASモデル)低減しました。(※容量あたりの消費電力 (W/TB)16TBモデル=0.28、18TBモデル=0.25)
16TBまでの記録方式に対して約13%の密度アップを行い、18TBを実現している。おそらく内部の
ディスク数は増えていないので、単純に記録密度を13%向上しているのであろう。
同時に消費電力を16TB比で10%削減している。これはどうやっているのだろうか。
FC-MAMRに変えたことで減ったのだろうかな。
詳細は同社の技術情報である東芝レビューで紹介されている。
キュリー温度とか専門的な用語が並んでいるので難しいが、どうやらHAMRよりもMAMRのほうが実用化が
容易であったという事のようだ。
MAMRの動作原理は論文を引用するとこういうことだ。
MAMR方式は,記録磁界にマイクロ波を重畳させて記録媒体に印加し,記録媒体の磁化との磁気的な相互作用,すなわち強磁性共鳴を生じさせることで記録磁化を大きく歳差運動させる。その結果,従来方式に比べ,低い記録磁界で記録媒体の磁化反転が可能になる。
MAMRにより磁性体の磁極を容易に反転できるようになる、ということのようだ。
狭い範囲で磁性体の磁極を容易にできれば、密度はもっと上げられる。しかも反転のために必要な電力も
少なくできるようだ。この技術はまだ大容量化に貢献できるのではないかな。
なお、同じ場所にSMRに関する技術論文も載っていたのでご参考までにリンクをおく。
SMRってどういう方式なの?と興味がある人は図2を見てほしい。
FC-MAMR方式で何TBまで拡張できるか?はどこにも明確ではないのでわからないが、東芝の考える現行技術は
MAMRのようだ。WDやSeagateはHAMRを採用していたと思うので若干違うようだ。
数年たつとまたMAMRでは限界になり、50TBのHDD実現のために新しい技術が必要、なんてことになっていると
思う。この先もまだまだHDDは必要だ。
耐久性が高く、安全安心でデータを保持できるHDDの登場に期待する。
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