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2020年5月12日更新
先の北海道の地震で、ある伝説が生まれた話。
IT業界に関するニュースのまとめはこちら。
その日は泊まりの出張があり、いつものように起きて支度をして、いそいそとでかけた。
家を出る前に電車の運行状況を見るのが自分の癖。この日もいつものように、
さっとスマホの通知を見た。
北海道胆振地方で震度6の地震
という表示があったが、近隣の電車の通知ではなかったので気に留めずでかけた。
その日は日中は缶詰で仕事をしており、職場の話題はもっぱら台風だった。
(出張先が関西だったので)
「そういえば、北海道の地震、すごかったみたいだね」
そう言われたが、ニュースを見てなかったのでよくわからなかった。
ホテルに着き、テレビをつけたら、驚きの映像。なんと、北海道全域がまだ停電しているという。
え、地震直後ではなくて、今も?もうすぐ24時間経つというのに。ブラックアウト?
予想と違うニュースに驚き、しばし見ていた。
地震に関しては報道でいくらでも伝わっていたと思うのでこのくらいで。
亡くなった方のご冥福をお祈りします。
IT業界で北海道といえば、東京から遠く離れているので、バックアップ、
DR向けにデータセンタが設置されていることを思い出すだろう。
中でも自分が思い出すのは、さくらインターネットのデータセンタだ。
数年前だったか、新たに石狩データセンタを開所したというニュースを見たことがある。
どうして北海道?しかも、札幌でなく石狩?
その疑問の回答は、エコだった。北海道は平均気温が東京よりも低く、さらに冬季が
長いので冷房コストが東京よりも安く済む。なるほど。通信の遅延は大丈夫なのかな。
そんな疑問はあったが、いつの間にか忘れていた。
そんな冬には冷房コストが安く済む石狩のデータセンタ。しかし地震は夏に起きた。
従い、冷房なしでは維持できないし、そもそも電気が来なければサーバたちが動かない。
UPSという停電時に電気を巨大なバッテリから供給する手はもちろんあるが、
UPSはあくまでも緊急対応の時間を稼ぐためにある。家庭用ならUPSへの切り替えを
契機にサーバを安全にシャットダウンする。
データセンタでは、発電機を起動するまでの時間を確保する。この石狩データセンタでも、
UPSへの切り替えを契機に自家発電を開始したようだ。自家発電、と言っても、
人が運べるような大きさではない。自分が以前某所で見学した際は、
ビルの上層フロアに置かれた、巨大なものだった。何千台のサーバと冷房に電力を
供給するためには、発電能力は相応のものが必要だ。
問題は、自家発電には燃料が必要であるということ。
石狩データセンタでは48時間分の燃料を確保し、更にエネルギーの供給会社と契約して、
非常時は優先的に重油を運ぶ契約を結んでいるはずだ。(通常のデータセンタでは
こういう契約をする)優先的に重油を運ぶことに違和感をもつ諸兄がいるかもしれないが、
サーバが止まると日本の経済が崩壊するかもしれないと思えば、こういう契約を
理解いただけると思う。
地震発生後、すぐに停電となりUPSに切り替わったはずだ。それからは燃料の残量との戦い。
なくなればゲームオーバ。データセンタを運用する方々は知恵を絞ってなんとか
燃料消費を抑えたに違いない。
実際にあった残量は48時間分だが、これを60時間まで持たせたそうだ。それ以降は
電力の復旧や燃料が調達できて、無理なく運用できたと思う。
IT業界のあるある話だが、もしものときの仕組みは、作られても試されることは少ない。
もしも停電がUPSの容量を超える時間であったら。もしも燃料が期待したタイミングで届かず、
サーバの停止が必要になったら。
こういうリスクを想定した対応は考えても、実際には起きないだろうと慢心し、
定期的な訓練さえやらない会社もあると思う。それではだめなんだ。
運用員は今回の事例を教訓にして、まさかの事態にどう対応するか考えてほしい。
そして、今回の事を誇らしく語ってほしい。
さくらインターネットがサーバ全停止にならなかったことで、日本あるいは世界の
たくさんのユーザな生活を守れた事を認識して、偉業を達成した運用員の皆さんを称えたい。
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