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なんと、データセンタが火災で炎上し、いくつものシステムが停止する事態が発生した。
バックアップがないため、落ちたシステムの復旧は不可能な模様。
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フランスでその火災は起きた。
3月10日にフランス東部のストラスブールにあるヨーロッパ最大のDCで火災が発生。
いくつかあるビルのうち1棟が全焼し、このビルに保管されていたデータはすべて焼失した。
出典:ロイター WEBページ
サーバというハードを含めてデータが消えてしまったため、そのサーバ上で運用されていた
仮想マシンの提供するサービスはすべて停止。夜の出荷から数百の勇敢な消防士の働きで朝に鎮火したようだ。
下記ロイターの記事を意訳する。
データセンタはフランスの企業、OVHCloudのものだ。この企業はちょうど2日前に株式市場にIPOで上場すると
公表したばかりだった。
OVHCloudの顧客は多種多様で、USのamazon,MicrosoftといったGAFAにデータを牛耳られることを良しとしない
ヨーロッパの考えもあって、ヨーロッパのデータをUS企業ではなくヨーロッパの企業の運営するDCに
置きたいという要望がある。同様に日本でも国内資本でないとだめというケースが全くないわけではない。
特に政府系の場合は、海外資本の企業に預けるのはほぼありえない話だ。
そういう考えを持つのはフランス政府だけでなく、多くあるようだ。いくつもの大手企業はこの災害に際して
DR、つまりDisaster Recoveryを発動してサービス継続を図っている。
DRサイトを持てるほどの金銭的な余裕がある企業はいいが、多くは持つことができない。
今回の火災では360万ものWEBサイトが影響を受けたようだ。この中には一般企業の他、フランス政府だけでなく
イギリス、ポーランド、象牙海岸の政府系サイトも含まれている。
また有識者のコメントでは、今回の火災でfrドメインのサイトの2%が影響を受けたようだ。
ある会社ではパリのファッション週間だというのに、メールサーバにアクセスできなくなったという。
この運営会社はフランス内で17ものDCを持ち、世界中では32個運用していた。
これだけの数を運用しているのであれば、ノウハウもあると思う。
失火とは思えない。何が原因だったのだろう。
DC運用企業のポリシーにもよるが、自分が以前見聞きしたDCでは電力供給の系統を2つ用意し、例えば
東京に設置されているDCであれば1系統は東北から1系統は新潟方面からと片方が災害で停止しても
電力供給が止まらないような系統を選んで設置をするようだ。DCは計画停電の際にも除外されるくらい
重要な施設なので電力供給は最優先でされる1つだ。
一方で電力系統をいくら十分に設計したとしても停電は起こりうる。そんな時に短時間で復旧する
ような停電に耐えられるよう、DC内にUPSを設置する。UPSとは無停電のための巨大なバッテリだ。
たいていのデータセンタには巨大なUPSがあり、そこにサーバたちをつなぐ。個々のラックにUPSを
用意する必要はない。
いくつかの追加情報によれば、今回のフランスのDCではUPS工事の翌日に火災が発生したようだ。
OVHCloud CEOのKlaba氏のTwitter投稿には、部品を交換したUPSが翌朝火事になっていたそうだ。
このUPSが火災の原因なのか。まだ原因は特定されていないが、何らかの影響があるようだ。
また今回火災が起きたビルは2011年から使っているもので、設計がかなり古いDCといえる。
冷却設備、消火設備などいろいろなサーバに付随する設備が古そうだ。古いものは失火の原因になる。
定期的に設備を更新していくべきであるは、企業はそういうお金を渋る。渋った結果が今回の
火災の原因ではないのかなぁ。なんて思ったりもする。
ストレージ上のデータを安全に保管するために、RAIDが考えられた。安価なストレージで
信頼性を向上させる手法だ。
今はクラウドで同様に2重、3重とデータを保管して、データを守るような仕組みを作っている。
でも、RAIDが崩壊してデータがすべてロストするように、クラウドだって今回のようにすべてが
灰に帰すことがあるだろう。その時にデータのバックアップはない、あるいはDRサイトがなければ、
サービスを継続できない。
継続できなければそれを運営する企業は社会的な価値を失う。
もしも確定申告期間中にe-TAXサイトが落ちたら。
もしも銀行や証券会社のサイトが落ちたら。
もしもコロナウィルス対策関連のサイトが落ちたら。
こういうことを考えずにはいられない。フランスのDC火災は日本でもありそうな話であって、
決して自分とは違う世界の話しではない。
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