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年明けに業界を震撼した「スパイ事件」がとうとう会社同士の裁判になった。
ソフトバンクの社員が基地局に関する秘密情報を持ち出して転職した。その先は楽天モバイル。
楽天モバイルではその秘密情報を使って有利に基地局を設置する場所を決めることができたという。
ソフトバンクはこれによる損害賠償として楽天モバイルと元社員に対して約1,000億円を求めている。
そのほかの請求は不正な情報により建てられた基地局の使用差し止めと廃棄、および持ち出した情報の使用差し止めて廃棄だ。
出典:ソフトバンク WEBページ
以上がソフトバンクの主張だ。一方で楽天モバイルは持ち出された情報は使っていないという。
元社員は2月に不正競争防止法違反ですでに起訴されている。刑事事件としては進行中だ。
上記の損害賠償は民事だ。情報を持ち出された側が持ち出した側に対して使うなという。そういうことだ。
ここで問題になるのは楽天モバイルはその情報が不正に持ち出されてきた情報と知っていて使ったかどうかだろう。ソフトバンクのニュースリリースには下記の様に書かれている。
当社は、当社が営業秘密として上記手続において証拠保全を求めていた電子ファイルが、楽天モバイルが業務上利用するサーバー内に保存され、かつ、他の楽天モバイル社員に対して開示されていた事実を確認しています。なお、楽天モバイルは、これらの電子ファイルについて裁判所および当社に提出後、全て廃棄したと主張しています。
これからわかることは、情報は確かに存在し、楽天モバイルの基地局建設に関する作業に何らかのメリットがあるものであった。そのため元社員以外の楽天モバイル社員にも共有されて、複数の人間がその情報を使って基地局建設を進めたのであろうと、想像できる。
結果はそうなのだが、持ち込まれた経緯は上記ではわからない。元社員が刑事事件の方で自分の転職を有利にするための手土産としてソフトバンクの秘密情報を持ってきた、と自白しなければ判断は難しいだろう。
ほかの社員は「なんだか知らないけどとても便利な情報がある」、と思っていただけかもしれない。資料にソフトバンクのマル秘情報と書かれていなければそういう状況もあり得ると思う。
一方で大きな会社は特に気を付けていると思うが、マル秘情報は万が一の流出時に出所がわかるように企業名などの情報を埋め込んでいる。たとえば透かしにして背景画像にする場合もあるだろうし、極秘プロジェクトの場合はシリアル番号を割り当てて、流出した場合は誰のものなのか分かるようにしている場合もある。
手間がかかることではあるが契約上の問題でそうしなければならないプロジェクトもある。
したがって、公開されていた情報にはおそらく「ソフトバンク」とヘッダあるいはフッタに記載があって、その資料をそのまま、あるいは資料からソフトバンク名称を消した改変をしたものを用意して共有していたと思う。
前者であれば他の社員も共犯といわれても仕方ない。他社の情報を平気でそのまま使うのは、コンプライアンス上かなり問題であり、それが社内で大問題にならないとしたらその会社は危険な状況だ。
後者であれば、他の社員には判断できないだろう。違和感ありつつも誰かがまとめた便利な資料を使うことがあると思う。
ほかの社員の罪がどうなのかはあいまいなまま決着がつくような気がするが、持ち出した元社員が罪を逃れることはできない。自分の転職を有利にするためであろうが勤務先の情報を持ち出して売り渡すなど、平然とされていては社会は無茶苦茶になる。
紳士協定かも知れないが就職の際に、退職後は同業他社に1年程度は転職しないと誓約書を書かされることがあると思う。守られないケースが多発したらもっと重い刑罰が定められるのであろう。
特に競争が激しい業界ではこのような話は多かれ少なかれあると思う。しかしそれが会社の命運を変えかねないような情報であれば、企業の社会的責任やフェアな姿勢に泥を塗ることになる。
今回の件が楽天モバイルが会社ぐるみでグルだったのか、転職した社員の一存だけなのか。結末を注視していく必要がある。
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