時々やっている、企画・開発者に聞くシリーズ。今回はスマホのOPPO 製 Reno 11Aについて、オウガ・ジャパンの企画担当の方に伺った。
Reno 9Aと比べると今回は結構機能が向上している。Reno 11Aを企画した背景に何があったのだろうか。
機能も価格も魅力的で市場を牽引するOPPO のスマホのまとめはこちら。
OPPO Reno 11Aとは
今年の初夏にリリースされた、OPPO の最新ミッドレンジスマホ。初代はReno Aでそこから数えて、えー何台だっけ。
Reno A, Reno 3A, Reno 5A, Reno 7A, Reno 11Aとリリースされてきた。数字を見ていると1,2,3・・・と順番になるかと思いきや、2がないけど素数かな。
来年はReno 12AではなくReno 13Aかもしれない。
リリース時の記事はこちら。ミッドレンジにふさわしい仕様、価格で、激しいゲームをするには向いていないかもしれないが、普段使いにはよいと思っている。
ただRenoAシリーズは初代の衝撃があまりに強すぎたせいか、3A~9Aの世代の印象が薄い、はっきり言えばよくない。
マイナチェンジというには中途半端。そういう印象だった。そのため、最近のスマホの買い替え候補にOPPO が出てきてない。
今回、OPPO の企画担当の方に話を伺う機会を得たので、Reno 11Aはどうして生まれたのか、その搭載機能を載せた背景は何かなどいろいろ質問させていただいた。
回答をしていただいたのは、「オウガ・ジャパン株式会社 プロダクト部企画課」の方になる。(以後オウガ企画と略します)
1 注力する機能の選定
Irvine
Reno史上最大の進化をされていると伺いました。バッテリ、CPU性能、カメラについて特に注力されたと思います。
どの分野を注力するかについては市場調査をされて決めているものと思いますが、アンケートを行っているのでしょうか。あるいはXなどSNSやブログでしょうか。
オウガ企画
ご想像の通り、アンケートの実施をしております。
ただし、単純にアンケートだけで何かを検討するということはありません。
市場の調査については最新の業界全体の方向性や、技術トレンド、スペックと価格のバランスなども前提としています。
加えて、調達の観点からも実現可能性が高く、広いユーザーにベネフィットがあるというバランスを重視 します。
X、SNS、ブログ、販売サイト、掲示板、比較サイト、動画等なども広く視野にいれて情報を参考にしますし、
実際の販売元である通信キャリア様および販売店様からのフィードバック、販売スタッフからの現場の声なども合わせた上で検討し、その時に最適な形でお届けしていくことを目指しています。
想像以上に幅広い情報を仕入れて次はどんな機能を入れるか、どの機能をよくするかと考えているようだ。
2 バッテリ充電時間
Irvine
シャオミ が10分で充電できる機種を出しています。おそらく同等の機種を御社はリリースできると思っていますが、あえて出さない理由は何かありますでしょうか。
私は
シャオミ の
11T Proを使っていますが、急速充電は本体がかなり熱くなり、バッテリ劣化が早まる、場合によっては出火の可能性もあるかと思い、急速充電は使っていません。
ほどほどの急速充電はいいと思いますので、67W程度なら熱くならないのかなと想像しています。実際のところはいかがなのでしょうか。
オウガ企画
もちろん、同等の機種をリリースする能力は有しています。
こちらについては出さないと決めているわけではなく、最適なタイミング、価格帯、販売先、
超急速充電を受け入れる土壌の醸成というものについて議論をしている所ではあります。
需要が高まるようであれば積極的にリリースしていきたいと考えています。
なるほど、タイミングを見定めているということか。
オウガ企画
超急速充電の端末は海外では何年も前から発売されており、既に億単位の利用者が使っています。
どのメーカーの商品もその安全性を担保されているものではあるのですが、
日本市場はまだ慣れていないというのもありますので、まずは普及価格帯のReno 11Aで広く67Wでの充電を体験して、そのメリットを感じていただきたいと考えています。
OPPO は急速充電技術の分野で開発を推進するだけでなく、ユーザーの充電体験全体も重視してきていますので、
多くの人が心配する発熱や安全性についても厳密に研究や試験を行っており、それぞれに優れたソリューションを有していますので、安心してご利用いただくことができます。
実際の67Wでの充電も、安全基準を超えたような温度にはならないよう設計されております。
もし炎天下の車のダッシュボードの上など、特殊な温度環境の影響で安全が確保できない温度になった場合は、
充電を受け付けない等のセーフティ機構もあります のでご安心して使っていただけると考えています。
OPPO SUPERVOOC技術の詳細についてはMWC2022などのイベントで詳しく発表しておりますので、興味があればご覧になってください。
https://www.oppo.com/jp/newsroom/stories/oppo-mwc2022-supervooc/
この夏も熱かったので、モバイルバッテリの発火事故があったと聞く。
スマホについても発火したものがあったかもしれない。OPPO は安全性を考えているとのこと。
67Wが普通のレベルになったら、次は100Wへ進むのだろうけど、シャオミ ほど進めたいとは思っていないところに企業文化かな、差があるように思えた。
つまりOPPO はやや慎重、シャオミ はイケイケではないかと思う。
3 SoC選定について
Irvine
最近の御社のスマホはMediaTek製のSoCが良く載っています。Snapdragonのほうが名前が通って売れやすいようにも思えますが、コスト優先でMediaTekにしているのでしょうか。あるいはReno11Aの機能の実現のためにはMediaTek製の方が良いと判断されたのでしょうか。
MediaTek製SoCについては不勉強でどの程度の性能か存じておりません。
オウガ企画
OPPO はMediaTekと共同開発を行い、チップとシステム、メモリー、キャッシュとの調和性が向上させ、チップの能力を最大限に引き出し、スマホが長年に使ってもサクサク操作できるようになりました。
え、共同開発!搭載しているMediaTekのSoCはOPPO 専用なのかな。
オウガ企画
SoCの選定についてあまり詳細には回答できませんが、シリーズごとのユーザー層の使い方に満足できるものを選ぶというのが第一としてあり、Qualcomm社だから、MediaTek社だからという理由やコスト・性能といった面だけではなく、全体のバランスで考えています。
「全体のバランス」には、その機種がミッドレンジかローエンドか、それゆえコストはどこまでかけられるか、という意図があると理解した。
オウガ企画
業界全体の話としては、日本市場はフィーチャーフォン時代からQualcomm社と縁があり、歴史的にSnapdragonの認知度が高い国です。
日本だけの視点で見ますとMediaTek社は相対的には後から参入してきたメーカーであり、
平たく言ってしまうと安かろう悪かろうといった印象がある人も多いとは認識しています。
ただし、現状のMediaTek社は全く後追いメーカーという立ち位置ではなく、Qualcomm社に匹敵するようなSoCも作れるSoC市場のトップメーカーとなっており、優れた製品も持っています。
え!そうなの!それは知らなかった。
オウガ企画
そうした流れの中で、
OPPO のGlobalの端末ではMediaTekの製品もQualcomm社製品同等に積極的に採用しています。日本向け製品に対しても、日本参入当時は歴史的背景からQualcomm社よりの選定を行っていましたが、昨今ではGlobal同様に、発売タイミングに対して良いものがあればMediaTek社製のものを採用することも視野に入れて活動するようになっています。
OPPO Reno10ProもReno11 AもMediaTek製だが、そうしたのはSnapdragonよりも安いから、という理由ではなく調達の時期にちょうど仕様を満たす最適な=性能機能を満たしとにかく最安になる、SoCを探したら、MediaTekだった、ということのようだ。
SoCの互換性があるわけではないだろうから、SoCを最初に決めてメモリや周辺のチップも決めていくことになると思う。となると、コストで最後に決めるという印象だったが、どうやら戦略的に最初に性能機能からSoCを決めてそれに沿ってスマホを作っていくようだ。これを年に何回も製品リリースするとなると結構管理が大変だ。
4 データ圧縮機能について
OPPO Reno11 A COLOR OS
Reno 11AではROMのデータを圧縮して容量を見かけ上多くするような仕組みがある。これについて聞いてみた。
Irvine
この機能はとてもいいと思いました。しかし他社はやっているように見えません。
この機能を実装するきっかけは何かあったのでしょうか。
オウガ企画
他社にも類似の機能はありますが、弊社はより長く使いたいというユーザーの需要に対するアンサーとして良く見えるようにアピールしている所はあると思います。
ROMという限りある空間に対して、よりスマホを長く快適に使うために どうソフトウェア側でサポートできるかが実装の出発点になっています。
他社製スマホにこの機能があるという記憶はないが、もしかしたらグローバルではあるのかな。
OPPO はユーザに長く使ってもらいたい、という気持ちでスマホを作っていただけているようだ。ソニーXperiaのいたわり充電にも通じて好感度が高い。
5 AI機能について
Irvine
オンデバイスのPixel、Galaxyに対してクラウドで処理するReno11Aは、コスト面ではいい方法と思います。
一方でネットとつながらないと使えないという欠点もあります。
コストと利便性の兼ね合いでこの方針にされたと思いますが、決定に至るまでの議論のポイントは何かありましたでしょうか?
例えばコスト優先は譲れない、あるいはオンデバイスは機能的に劣るのでクラウドでやるべき、など
オウガ企画
OPPO は、AIの方向性として”
make AI phones accessible to everyone “という理念を持っています。
これは
OPPO がAI体験を特定の端末のユーザーに閉じた体験とするのではなく、世界中のより多くのユーザーが体験できるようにするべきと考えているからです。
そのため、Reno11 Aに限らず、ハイエンドからローエンドすべての製品ラインにAIスマートフォンをラインナップし、誰もがAIスマートフォンを利用できるようになることを目指しています。また、質問でコスト面に言及されている通り、オンデバイスで生成AIなどの重たい処理を行う場合にはどうしても端末が高性能な構成である必要があります。現状では、クラウド処理の方が処理速度が早く、端末性能にも依存しないため、低価格帯でのAIスマートフォンの提供も可能になります。
そういった点から、現時点ではクラウド処理によるAIスマホを普及し、新たな体験をより多くの人へ届けたいという考えです。
想定通りの回答だ。
ネットにつなげずにスマホを使うわけがないだろう 、という心の声が聞こえてきそうだ。
それはそうなのだが、問題が2つある。
パケットを使いつくして、利用できない状況になる、あるいは低速になるプランがある
どのプランも楽天モバイルのように無制限であればよいが、そうでもない。ほかのMNO3社であれば1万円近い月額料金になり、払いたくないレベルだ。
一方でOPPO の販路はMVNOが多く、MVNOで無制限プランは提供している事業者はなかったはずだ。
パケットを追加すればいいだろう、という声が聞こえてきそうだが、それはユーザ一人一人に事情があるだろう。低速でも使いものになる速さならいいが。
ちょっと前のドコモのようなパケ詰まりがあると、十分な応答性能を発揮できない
これは完全にキャリア側の問題だが海外に行った時でも当てはまるのではないだろうか。つまり使いたいと思った時に十分な速度で通信できず、使いものにならない応答時間になる可能性がある。WiFiが用意されていれば使えばいいのかもしれないが、素性のわからないWiFiほどつなぎたくはない。
6 Windows連携機能
デモにて、Reno 11Aの画面をWindowsで表示して、プレゼンができると見せていただいた。ひと昔前ならカメラでスマホを撮影するしかなかったので、スマホ画面のプレゼンの機会があればこういう機能があると便利だ。
Irvine
デモを拝見していてとても使いものになりそうな機能と思いました。
他社ではこういうものはないと思いますが、この機能を実装することになったきっかけはあるのでしょうか。
オウガ企画
他社にも類似の機能はありますが、弊社もPCとスマートフォンの相互連携は重視しています。
スマートフォンをPCと有線で接続して必要なファイルを見つけ出すのは非常に難しいため、
よりかんたんで、目で見て分かりやすくそれぞれの機器を相互につながれるようにするべきというのがきっかけとなっています。
自分の場合は撮影した写真はすべてPCに転送しているので、そういう使い方はないのだが、欲しい人はいるのかな。
7 サウンド機能のダウングレード
これはReno 11Aで機能がダウンしたものについて質問した。
Irvine
モノラルスピーカ、3.5mmジャックなしと機能が他社よりも劣ると思いました。
一方でBluetoothイヤホンの利用が前提ならモノラルスピーカでいいでしょうし、ジャックも不要でしょう。
そういう判断があってコストダウンのために決めたのでしょうか
オウガ企画
Reno Aシリーズのユーザーの使い方を継続的に追ってきた結果、有線イヤホンからBluetoothイヤホンへの移行がある程度完了したという点が理由として一つあります。
やはりそうなんだ。今は街中で有線のイヤホンを使う人はかなり減ったからなぁ。自分は耳から落ちそうなのでワイヤレスイヤホンをつけて外を歩くのはできないなと思っている。
オウガ企画
Reno11 AでもUSB Type-Cの有線イヤホンがご利用いただけますし、USBC to 3.5mmの変換プラグを利用すれば3.5mmプラグの有線イヤホンのご利用も可能です。
また、3.5mmイヤホンジャックを搭載した機種もございますので、利用方法にあったものでお楽しみいただければと考えております。
USB-Cの変換アダプタは冗長になるのであまり使いたくないものだ。でも上述のように多くの人はもう使わないのだから、なくしてコストダウンが正解だろう。
8 来年の製品に向けて
Irvine
数年間Renoシリーズは仕様があまり進化なく、停滞している印象でした。
Reno11Aでちょっと進んだ雰囲気はありますが、RenoAのときのような衝撃を受けていません。
来年来るであろうReno12Aでユーザや潜在ユーザに対してアピールしたいお言葉はありますでしょうか。
オウガ企画
日頃よりご愛顧いただきありがとうございます。
おかげさまでReno Aシリーズは大変ご好評いただいております。
シリーズを愛してくださるお客様からの応援・感想、お叱りの声、ご意見などありがたく頂戴しております。
近年はどのメーカーも部材の高騰、円安という苦境に立たされています。
大幅な値上げに踏み切るメーカー、スペックを維持するメーカーなど様々ですが、
その中でも我々は日本市場の皆さまに各シリーズ一貫した価格で、その利用シーンを満足させられるものを提供できるよう努力してきました。
これからも、
OPPO の端末になにが求められているかにしっかりと向き合い、
こちらからご提供できる最大限で答えていきたいと考えています。
ご期待いただければと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
まとめ
OPPO の価格の方からの回答は多くは想定した通りだったが、意外な回答があった。
SoCについては、OPPO 自身はSnapdragonもMediaTekも変わらず扱っている。その時々の最適なSoCを選ぶ方針だ。日本市場ではSnapdragonに慣れてしまっているのでMediaTekに対して安かろう悪かろうという印象の人が多いとOPPO の方が語っている。自分もそうだ。使ってないからいいか悪いかもわからない。
思い起こせばXiaomi 13T ProがMediaTekなのでいまいちと記事を書いていた。
もしかしたら、Pixel7aでなくXiaomi 13TProを買っていたら、より幸せだったのかもしれない。次に買うスマホではMediaTekだからと排除することなく試してみるか。
そのためには性能をSnapdragonとMediaTekで比較できる仕組みが必要だ。どこかにないかな。
OPPO RenoAシリーズは普及価格帯でミッドレンジをリリースし続けていけるよう、日々努力していると思う。
Reno 11Aは9Aからかなり機能が良くなった。でもReno A搭乗時の衝撃には及ばない。
来年以降の新製品で目を見張るような新Reno Aシリーズ端末がリリースされることをわくわくして待ちたい。
他のインタビュー記事
ご参考までに過去に行ったインタビュー記事はこちら。
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著者プロフィール
irvine
ソフトウェア設計、ストレージ設計を経てクラウドにかかわる仕事をしている、東京郊外在住のエンジニア。 仕事でUS,UK,SGなどの国とかかわる。 自作PC、スマホ、タブレット、AV機器好き。ドラクエウォークはルーチンワーク。Linuxやストレージ、IT業界の動向は興味を持っている。 新しい機器、サービスに興味あり。年数回のレビュー(自腹購入、ご依頼)と発表されて興味があるものの新製品机上レビューをやっている。 2022年はJAPANNEXT様のアンバサダーを務めました。