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HDDの故障率を紹介する海外事業者の恒例の記事の紹介。
大容量ストレージデバイスであるHDDについてのまとめはこちら。
前回の記事はこちら。
恒例のUSのBackBlaze社の公表データのご紹介。以前の仕事での経験をもとに、同社のデータをみて勝手に考察する。
今回は2022年3Q(7-9月)の状況。
BackBlaze社はクラウドストレージなどのサービスを提供するUSの会社だ。同社は6月末時点で230,897台のストレージ(HDD,SSD)を利用している。4,200台がOSブートドライブで、うち2,778台がSSDで1,422台がHDDだ。それと226,697台のデータドライブだ。
データ用の226,697台について書かれているが、テスト用途の388台と60台に満たない種類のストレージは外されている。このため、29機種、226,309台がレポートの対象になっている。
3Qで故障が1台もなかったドライブは3モデルあった。上図の赤線のものだ。
ただしWDの16TB以外の2台はドライブデイが少ないので、AFRを計算して他と比べることは難しい。つまり故障に対して堅牢、というわけではない。
また新たにシーゲートの 8TB (model: ST8000NM000A)と16TB(model: ST16000NM002J)が追加された。
AFRは1.64%で、2Qの1.46%、1年前の1.10%よりも上がっている。これらは老朽化によるものと考えているようで、古いドライブは引退し新しいドライブに交替してAFRは下がっていくと考えている。
製造ベンダの割合は下図のように変わってきている。かつてはシーゲート一辺倒だったようだが、シーゲートを減らして東芝、WDを入れているようだ。
数が出る顧客であれば製造ベンダ側で値引きなどして入り込もうとするだろう。あるいはシーゲートは過去にBack Blaze社で問題があって徐々に減らしているのかもしれない。
なぜAFRが高く高価なドライブを買い続けるか、理由がある。
Back Blaze社が運用するクラウドストレージはドライブ故障を前提としている。それとドライブの故障率レポートなどのように研究をするためのようだ。
下表は興味深い。HDDの故障率とその交換にかかるコストを比較している。
Model 1~3は14TBの3機種としておく。それぞれ5,000台ずつ購入して5年間運用していく。壊れたら新しいHDD(予備のもの)に交換する。
3機種でAFRが異なり、それぞれ1.5%、1%、0.5%だ。(d行)
元の台数をかけると年間の故障ドライブ数が計算できる。(e行)この試算の仮定では、Model 3を基準にすると、Model 2は2倍、Model 1は3倍になる。
故障したドライブは放置しても交換はされない。運用チームが発見して交換作業担当者に連絡し、HDDを交換する。
サーバなどの構成にもよるが、RAIDであれば壊れたと分かってから交換するだろう。(重障害は想定しない場合)
1台のドライブの交換コストを$300と仮定すると、故障する台数に応じて、各Modelの年間交換コストが算出される。(h行)
※ドライブ自体のコストは保証によりかからない前提とのこと。
元のドライブのコストとこの交換費用を合わせたコストが運用のためのコストになる。(m行)
結果的に、ドライブの価格が安いModel 1がAFRが高いとしても、5年間のトータルコストは最安になる。
それゆえ、AFRが高いドライブでも安いドライブで構成するほうがトータルの運用費が安くなるということだ。
元値と交換のための費用とで拮抗するポイントがあるはずだが、AFRは十分低いということだろうか。
もちろん、これは試算でありAFRは毎期変わっているわけなので、どのドライブが最適なのかは購入時に即断できるわけではない。
それゆえ、いろいろなドライブを調べてデータを蓄積しているのであろう。
226,309台のHDDについて、29機種に分けて分析したものが下表だ。AFRは1.41%になっている。
2QのAFRは1.39%、1年前は1.45%だった。1年前よりは下がっているが、2Qよりは上がっている。
ここで、12TB以上でAFRが1%未満のドライブを抽出する。下表だ。
ここ数回はあまり変わり映えがない結果になっている。
驚くほど故障するHDDが見当たらなくなった。全体的に品質が上がったということだろう。
裏返すと、新しい技術がなく既存技術の改良のみなので品質が上がっているということだろう。
そろそろHAMR(熱アシスト磁気記録)方式のHDDが増えてくると思う。20TB位になるとHAMR方式などを使わなければ実現が難しい。これらの新世代になったら、また故障率がぐんと上がって当面は苦労する、となるのだろう。
数年経つと、すべてがSSDに変わっているのだろうか。それまでBack Blaze社のレポートが続いていることを願う。
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