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RedHatが今後のRHELのソースコードに管理について発表して大きな波紋を呼んだ。RedHatからクローンOSベンダに対する回答がブログに投稿されたので読んでいこう。
社会を支えるインフラになったLinuxのまとめはこちら。
前回の記事はこちら。
Alma LinuxとRocky LinuxからRHELのソースコードの扱いに関する変更により、OSSの危機と発表があった。短期的な対応は両者とも実施したが長期的にはRHELのソースコードをどう持ってくるかが問題となる。
新しいルールではRHELのソースコードを得るには、RedHatのコンソールからのみ可能で、コンソールの利用にはソースコードの再配布禁止に同意しなければならない。
このため、オープンソースという定義が覆され、RHELはクローズドなソースコードで進むのではないかと危惧された。
発表から1週間。RedHatのコアプラットフォームエンジニアリングのVPである、Mike McGrath氏のブログが投稿され、回答をしている。
しかし、回答はAlmaやRockyに対して辛辣なパンチを浴びせるものだった。内容を見ていこう。
McGrath氏がRedHatのOSSに対する取り組みを説明している。引用する。
Despite what’s currently being said about Red Hat, we make our hard work readily accessible to non-customers. Red Hat uses and will always use an open source development model. When we find a bug or write a feature, we contribute our code upstream. This benefits everyone in the community, not just Red Hat and our customers.
We don’t simply take upstream packages and rebuild them. At Red Hat, thousands of people spend their time writing code to enable new features, fixing bugs, integrating different packages and then supporting that work for a long time – something that our customers and partners need.
要約すると、
特に最後のものが重要で、企業が利用するにはサポートをしてくれる人が必要だ。黎明期のように無保証でソフトウェアを提供されると、問題があった時にその解決を自力で行わなければならない。本来アプリケーションやインフラで構成するサービスを提供する人がOSの不具合解析を行っていると疲弊してしまう。
その役割をAlmaもRockyもやっているが、RedHatが第1人者であることに変わりない。
I feel that much of the anger from our recent decision around the downstream sources comes from either those who do not want to pay for the time, effort and resources going into RHEL or those who want to repackage it for their own profit. This demand for RHEL code is disingenuous.
ここの言い方が辛らつだ。
ダウンストリーム ソースに関する最近の決定に対する怒りの多くは、下記2点から来ていると感じているそうだ。
つまり先週の非難の嵐は、RHELに対してお金を払いたくないけど使いたい人がしている、ということのようだ。
何十年か前は有償のソフトウェアを不正コピーして使いまわす職場が多かったと思う。
ソフトウェア側の対策のおかげで、正規ライセンスがなければ使えないような仕組みができた。
ソフトウェアベンダが内部を調査するなんて話も何度も聞いた。
そのくらい開発現場は予算がない中で作っていかなければならない。
もちろん、不正コピーされたソフトウェアを作る人は正当な対価を得る必要がある。それがなければだれも革新的なソフトウェアを作り出さないだろう。
だからといって予算がない現場でそのソフトウェア前提のものを作れと言われたとき、現場はどうしたらよいだろうか。
時は流れてソフトウェアにはOSSが登場した。利用時は無料で使える。改変したら(ライセンスによるが)ソースコードの開示でよく、開示によりソフトウェアの品質や機能が高まっていく。結果的にソフトウェアは最初の作者のものではなくコミュニティ皆で作り上げていく、という流れに代わった。
ただしここでも開発現場の予算は限られ、有償のRHELを使えることは非常に少ない。無償のOSを使えと言われるだけだ。
他の国ではどうなのかわからないが、日本ではこういう傾向が強くあり、どこの開発現場も困っているのではないだろうか。
だからRHELを不正コピーするのではなく、RHELクローンのOSが皆の需要にこたえられるようになった。
先ほどのMcGrath氏の言葉、RHELに対してお金を払いたくないけど使いたい人がしているについては、日本の開発現場を知る人は耳が痛いと思う。
再び引用する。
Ultimately, we do not find value in a RHEL rebuild and we are not under any obligation to make things easier for rebuilders; this is our call to make.
最後に下記を太字で締めている。
Simply rebuilding code, without adding value or changing it in any way, represents a real threat to open source companies everywhere. This is a real threat to open source, and one that has the potential to revert open source back into a hobbyist- and hackers-only activity.
逆戻り、というあたりは上述の無保証がまかり通った世界を言っているのだろう。
スキルがある人が自分の好きなものを作る、でも保証はない。この状況では趣味では使えても仕事には使えない。
もうLinuxはクラウドをはじめ世間のいろんなところに入り込んで現代の社会を支えている。
いきなりこれらをすべて有償OSに変えろと言われても困る。といって無償だけどどこまで信じてよいかわからないものでは手を出せない。
RedHatの考えはわかった。AlmaやRockyはどう考えるか?
Alma Linuxは正々堂々とした反論ではないが、価値観が違うと述べている。ダウンストリームでクローンOSを作ることに意味があるというのだろう。
Rocky Linuxは、RedHatに対する反論の形で、具体的なソース取得方法を述べている。
どちらも現状であきらめることなく、今後もアップデートを提供していくつもりだ。今後も続報をまとう。
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